毎週日曜11時から13時まで、全国のコミュニティFM(一部地域を除く)を結んで放送している地域SDGs情報バラエティ『ロコラバ』。今回は5月28日放送の『地域人』のコーナーから、静岡県で「救命具になるランドセル」を開発した企業をご紹介します。
近年、異常気象により、全国各地で集中豪雨による河川の氾濫などが相次いでいます。そんな水害から子どもたちを守るために、静岡県浜松市の株式会社「栄商会」が開発したのは、水に浮くランドセル。子どもたちが日常的に使うランドセル自体が水に浮き、救命具になるという画期的なアイデアを実現し、「ウクラン®」という商品名で2023年3月に発売を開始しました。
日常はもちろん、非常時にも役立つ“フェーズフリー”なグッズとしても評価され、「2021グッドデザインしずおか」金賞を受賞しています。今回は、同社の企画デザインを担当する、藤田悦子さんにお話しを伺いました。
――静岡県浜松市在住の藤田さんは地元企業である株式会社栄商会に入社し、事務職を経験されて、現在は企画、デザインを担当されています。 メガネ業界として初のぬいぐるみ型メガネスタンドや、動物や深海魚などをデフォルメした「メガネ&スマホクリーナー」を開発。地元浜松の素材を生かしたものづくりをはじめ、地産地消を目指しています。藤田さん、普段はメガネグッズを作られているんですね。
眼鏡ケースやメガネ拭き、スマホクリーナーなどを中心にデザインしています。自分が使いたいものや「こんなのあったらいいな」っていうことを基本にして商品開発をしています。
――土に還る素材のメガネ拭きも作っていると伺いました。
浜松は織物が有名なのでオリジナルの生地を作りました。従来の化学繊維ではなく、ユーカリの木から作った繊維でできたメガネ拭きです。使わなくなったら土に埋めていただくと、土に還るんです。
浜松は職人が集まる「ものづくりの町」ですし、面白いものがどんどん生まれていくんです。
――栄商会はメガネグッズを専門とした会社だそうですが、なぜランドセルの開発を?
地元の方々が、(東日本大震災で津波に襲われた石巻市釜谷地区の)石巻市立大川小学校を視察した時に「子どもたちを助けられなかったことが悔しい」と話していて。「何か対応できるものを作ってくれないか?」と依頼をいただき、当社で作ることになりました。
――「水に浮く」という発想に行き着いたのは?
浜松も地理的に水に囲まれた地域ですので、「水害から子供を守る」ということを念頭に置いて考えました。
――浮くランドセルで「ウクラン®」。こちらの特徴を教えていただけますか?
まず、着用した状態でランドセルの上蓋を持ち上げると、防災頭巾になります。その蓋を自分の胸の辺りに持っていき、背中のところと股のところにあるベルトに留めるとライフジャケットに変化する仕組みになっています。
――当局にも送っていただき、実際に体験してみました! 160㎝くらいの成人でも使えました。幅広く対応できるんですね。
そうですね。体重は80㎏の方まで使用可能です。
――水害に合うと慌ててしまうと思うので、普段から使い方の練習をしておく必要がありそうです。
子どもたちはどんどん体が大きくなりますので、ベルトの調整をしていくことも重要です。ぜひ普段から練習していただきたいです。
――使用された方、体験してみた方の声はいかがですか。
簡単にランドセルを変身させられることから、子どもたちからは「これで水に浮くんだ!」という声がありました。このランドセルを作って知ったんですが、最近は水泳の時間がない学校もあり、泳げない子どもたちも増えている現状があります。
ライフセーバーの方からは、「体力を温存する必要があるので、(水中にいるときは)浮いて待つことが大事」と教えていただきました。泳げない子たちからも「これなら怖がらずに水に入れる」という声をいただいています。
――ランドセルというと牛皮製品がスタンダードですが、 こちらはナイロン素材。革命的な商品だと思いますが、「本当にランドセルって言えるの?」という声もあったのでは?
形状はランドセルに近いのですが、素材は牛皮ではありませんから抵抗感を持たれる方もいるかもしれませんね。ただ、防災グッズとして認識していただけるようになってきました。
――大人用の商品のラインナップが揃うのもいいかもしれませんね。
いろいろな物が入るので、「高齢者施設の方たちにも便利だね」という声もいただきます。
――最後に、リスナーの皆さんへメッセージをお願いできますか。
インターネットで 「メガネケース・ドットコム」で検索していただきますと、「ウクラン®」の体験会の映像などが見られます。ぜひチェックいただけたらと思います。
――藤田さん、ありがとうございました!
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文・構成 池田アユリ