毎週日曜11時から13時まで、全国のコミュニティFM(一部地域を除く)を結んで放送している地域SDGs情報バラエティ『ロコラバ』。今回は6月4日放送の『地域人』のコーナーから、長野県でキノコを原料としたサステナブルな取り組みを紹介します。
シンガポールと日本のキノコ関連専門企業(合計4社)で立ち上げているMYCL Japan(マイセルジャパン) 株式会社。2022年7月より、日本独自のキノコ栽培技術を先進国・発展途上国にコンサルティングする事業を展開し、世界中にネットワークを構築しています。
同社の代表的な製品「マッシュルームレザー」は、キノコの菌糸体を培養して生産される、動物性原料不使用の100%植物由来ヴィーガンレザーです。キノコが生み出す可能性を追求し、社会問題の解決に寄与するサステナビリティの実現を目指しています。今回は、同社の代表取締役・乾馨太(いぬい・けいた)さんにお話しを伺いました。
――乾さんは兵庫県出身で大阪育ち。初の海外でオーストラリアへ移住し、学費と生活費を稼ぐため仕事と勉強に励みました。社会人大学院生の時、キノコ栽培技術を展開する株式会社サライ・インターナショナルジャパンを設立。2022年に MYCL Japan 株式会社を立ち上げ、新たな可能性を追い求めています。乾さん、どういった経緯で起業されたんでしょう?
私の会社はコンサルティングの専門商社で、世界市場に日本のキノコ産業をリブランディング(企業が持つ既存ブランドを再構築すること)しています。日本にはたくさんいい技術があるものの、世界に打って出ていない中小企業が多いと感じていました。「すごくもったいないな」と思って、挑戦してみることにしたんです。
――いろいろなものがある中で、キノコを選んだ理由はありますか?
本当に偶然でした。日本に帰ってきた時、妻とどこに住もうかと考えていて、自然が好きだったので長野県を選んだんです。いざ長野に来てたまたま出会ったのが、キノコ産業でした。そこで、「キノコって意外と農業じゃなくて、研究色が強いんだな」と感じたんです。
――たしかに、キノコは菌床(キノコを栽培するための培地)から育てますもんね。
もちろん作る段階は農業なんですけど、それまでの過程ってすごくアカデミックなんですよね。それがおもしろくて、グローバルビジネスとしての可能性を感じて起業しました。お客様は100パーセント海外の方です。
――開発された「マッシュルームレザー」、サンプルの生地を拝見しました。ビジュアルはオフホワイトに茶色のまだら模様で、まさにキノコの柄だなって。どのように作られているのでしょう。
詳しい説明はできかねるのですが、キノコができる前の段階の菌糸と呼ばれる糸状のものを特殊加工して、シート状にしているようなイメージです。
――食べられるマッシュルームを潰して作っているわけではないんですね! この菌糸を使った商品というのは、海外では結構あると聞きました。
海外で始まった技術ですね。私はもともと海外とのネットワークを持っていたので、この業界が昔からあることを知っていて、日本でもチャレンジしたらいいんじゃないかと思っていました。今までキノコは「食」でしか使われてなかったんですが、それを「衣」と「住」に転換するっていうのは面白い試みだと思って。
――「衣」ならバッグやレザーパンツなどがありますし、「住」なら家の壁紙やソファカバーに使えそうですね。マッシュルームレザーの特徴は、どういった感じですか。
素材自体100パーセントのサステナビリティです。石油由来の製品は一切使っていないことが大きな特徴ですね。 また、柄も個性的で1点1点異なります。自然に近い個性を楽しんでもらえたらと思っています。
――どんなものを商品化しているんですか。
最近ですと、エシカルブランド「FUMIKODA」とタイアップして、日本で第1号となる商品を作り始めています。その他にも、さまざまなメーカーさんから問い合わせをいただいています。車のシート、家具、雑貨など……。製品化への垣根がないですね。
――いろんな可能性があると思いますが、今後考えている展開は?
自然に近い素材なので、その魅力を前面に出しながらブランディングしていきたいです。当社に共感し、サステナビリティの志を持った企業と一緒に何かを生み出していけたらと思っています。
――ささやかな疑問なんですが、 さまざまなキノコの種類があるなかで、なぜマッシュルームだったんですか?
いや、実は「マッシュルーム」というのは種類のことではなく、キノコ全体のことを総称して呼んでいます。「シイタケレザー」より、「マッシュルームレザー」の方がストンと理解してもらいやすいかなと!
※編集者注:英語圏ではキノコの総称をマッシュルームと呼び、東アジアが主な原産であるシイタケの場合には Shiitake mushroom(シイタケ・マッシュルーム)とマッシュルームを付けて呼ばれることが多く、マッシュルームを名称に用いた方がキノコ由来であることがより伝わりやすい。
――そういうことなんですね。ちなみに、品種によって柄が違いますか?
柄はいろいろですね。商品に向かないキノコもあります。キノコの世界って奥深くて、もう何時間でも喋ってしまいます……。
――あはは(笑)。マツタケレザーとか見たいかも!
いや、むしろ食べてください(笑)。
――たしかに、「壁に貼らないで食べちゃおうか!」みたいになりそうですね(笑)。それでは最後に、リスナーの皆さんにメッセージをお願いします。
マッシュルームレザーは、自然と近い生活を感じていただけるような商品です。手に取っていただき、「人間は自然と共存しているんだ」ということを感じてもらえたらいいなと思います。
――乾さん、今日はどうもありがとうございました!
***
(番組パーソナリティ 横田)
英語圏で言うマッシュルームは、キノコ全体のことを指していたんですね。食べる以外に用途があるんだなぁと。奥深い世界です。
(番組パーソナリティ 川久保)
たしかに、蚕(かいこ)だって糸を吐いて作っているわけですから、それのキノコ版ってことですよね。まさか、菌糸で作っているとは驚きでした。
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文・構成 = 池田アユリ
編集 = ロコラバ編集部