放置水田でサツマイモ!? 宮崎県延岡市の喜郷ファームが取組む常識外の放置水田活用

2023.6.7 | Author: 池田アユリ
放置水田でサツマイモ!?  宮崎県延岡市の喜郷ファームが取組む常識外の放置水田活用

毎週日曜11時から13時まで、全国のコミュニティFM(一部地域を除く)を結んで放送している地域SDGs情報バラエティ『ロコラバ』。今回は5月7日放送の『地域人』のコーナーから、宮崎県にて一風変わった場所でサツマイモを生産する農家の取り組みをご紹介します。

 

宮崎県の中山間地域、延岡市北浦町にある「株式会社 喜郷ファーム」。田畑の区画整備がしっかりできている点や、蛍がすむ程の水質、品質の良い作物ができる土壌環境などの利点を活かして、オーガニックのサツマイモとお米を栽培しています。

 

今年2月に開催された「日本さつまいもサミット」では、有機栽培への取り組みや、放置水田の活用が評価され、「ファーマーズ・オブ・ザ・イヤー」を受賞。現在は6次産業化に向けて、商品開発や衛生管理の習得をめざしています。今回は、同社の代表取締役・梅田学宏さんにお話しを伺いました。

親戚に大反対を受けるも、脱サラして就農

――梅田さんは、宮崎県延岡市北浦出身です。10年勤めた会社を辞めて農業に就きました。「過疎化、高齢化が進む故郷で産業を起こして、次の世代にバトンをつなげたい」と、有機農業でサツマイモを栽培しています。梅田さん、脱サラして農家に転身した背景をお聞かせいただけますか。

私が幼少期のころと比べると、ふるさとで暮らす人や働く人は大変少なくなりました。1人暮らしの高齢者が増えるとともに、耕作放棄地も増えてきています。その光景を目の当たりにして、地元の若者たちと「この状況をどうにかしたいね」「ふるさとを守ろう」と話したことがきっかけでした。

――梅田さんの実家は農家だったのでしょうか?

母方の祖父母が専業農家だったんです。その後ろ姿を見て育ちましたので、農業に対してあまり良いイメージがなく、最初は仕事にしたいとは思っていませんでしたね。

――仕事を辞めて農業に取り組んだということですが、周りの方々の反応は?

妻や両親、親戚に「農業で地元のふるさとを守っていきたい。次に繋げたい」という思いを伝えたところ猛反対を受けました。 私には2人の子どもがいるんですが、私が就農した時期は上の子が2歳で、下の子はまだ生まれて間もないころでした。周りの反応は当然だったかもしれません。何とか説得して、どうにか就農させてもらったという経緯があります。

――大きな覚悟をもって臨んだわけですね。

水田の耕作放棄地でサツマイモを作る!?

――主にサツマイモを生産されているということですが、一般的には赤土や砂地で育てられる作物なのに、水田で作っていると聞きました。

そうです。延岡市北浦町は米作がさかんなので、水田がとても多いんです。 ただ、高齢化に伴い、田んぼの耕作放棄地が目立ってきました。この水田を生かせないかということで、もともと好きだったサツマイモの栽培をしてみようと思ったんです。

――きっと、普通の畑とは土の質や栄養も違うんでしょうね。

水を貯めて穀物を作る場所だったので水持ちは良いんですが、サツマイモに関して言えば、水はけの良いところで作らないといけないんです。

――そうですよね……。

そのため、水はけをよくするために水路を作ったり、土づくりをしっかりして品質を落とさないようにしたりなど、試行錯誤しながら栽培をしているところです。

――反対を押し切って取り組まれた末、「ファーマーズ・オブ・ザ・イヤー」を受賞されました。周囲の見方が変わったのでは?

さまざまなメディアが取り上げてくださり、「テレビや新聞で見たよ」と声をかけてくださる方が増えてありがたかったです。全国からお問い合わせをいただき、販売促進にも繋がりましたね。

 

地域の未来のために、6次産業化にも注力

――サツマイモはどんな種類のものを作っているのでしょう。

紅はるか紅はるかとシルクスイート、2つの品種を作っています。

――焼き芋で大人気の品種ですよね。ねっとりとした口当たりが特長の。

はい。紅はるかは他の品種よりも糖度が高く、甘味があり濃厚な食感ですね。もう1つのシルクスイートは水分が多く、絹のようにしっとりとしていて食べやすいのが特長です。

――今後の展開について伺えますか?

今は6次産業化に向けて、干し芋の加工委託をして製造しているところです。

――他にも食べ方があるのでしょうか。

さまざまな料理にサツマイモは向いています。お子様がいらっしゃるご家庭ではジャガイモの代わりにカレーやシチューに入れると、ほどよい甘味が味わえますよ。

――それは試してみたいですね! 最後に、リスナーの皆さんへメッセージをお願いします。

「喜郷ファーム」の商品は、全国の自然食品系列の企業さんで販売を行っております。延岡市のふるさと納税の返礼品としても取り扱っており、当社のホームページでも購入いただけますので、ぜひご賞味ください。

***

(番組パーソナリティー 横田)
周囲の反対を押し切ってまで始めた行動力が素晴らしいですね。それがちゃんと身を結んで、遠くまで見据えてらっしゃる方だなと感じました。その視点を参考にしたいです。

(番組パーソナリティー 川久保 )
江戸時代の「天保の大飢饉」で、農学者の青木昆陽(こんよう)が サツマイモを育て、食料難を乗り切ろうとしたという話があります。そこから日本ではサツマイモに注目が集まりました。梅田さんのお話を伺って、延岡の耕作放棄地の増加や高齢化の問題に向けて、もう一度サツマイモが町の救世主になったらいいなと思いました。

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文・構成 = 池田アユリ
編集 = ロコラバ編集部

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